専業主婦と同等の主婦休業損害を認めさせ、保険会社主張額の3倍の賠償額を取得した事案
事故態様 | 赤信号で停車中、追突された |
---|---|
事例の特徴 | ①フルタイム正社員の兼業主婦で会社休業実績ない事案で、専業主婦と同等に主婦休業損害を獲得できた事案。 ②フルタイム正社員の兼業主婦で会社休業実績ない事案で、通院慰謝料を保険会社自主張の自賠基準ではなく赤本基準で解決。 |
属性 | 女性、40代、正社員 |
症例・ 受傷部位 | 頚部捻挫、腰部捻挫 |
後遺障害等級 ・死亡事故 | 後遺障害を残さず治癒 |
主な 損害項目 | 受任前 | 受任後 |
---|---|---|
治療費 | 約60万円 | 約60万円 |
交通費 | 約3万円 | 約3万円 |
休業損害 | 0円 | 約80万円 |
通院慰謝料 | 約60万円 | 約95万円 |
既払い金を除く支払額 | 約63万円 | 約178万円 |
治療費等を含む 賠償総額 | 約123万円 | 約238万円 |
- 交通事故の状況
- 赤信号で停車中,追突された
- ご依頼内容
- フルタイム正社員をしながらご家庭では家事労働を一手に引き受けておられる既婚女性からのご依頼。
家計を維持するために、痛みを我慢して正社員の仕事を休まずに続けたが、休業損害が0円ということに疑問を持っている。
- 対応内容と成果
- (成果)
保険会社主張額の約3倍に増額。
(休業損害について)
保険会社の主張は、ご依頼者はフルタイム正社員の仕事を休んでおらず、現実の減収がないことからすると,家事労働に制約があったことも認めないとの主張でした。
これに対して弁護士は、痛みがあるものの家計の収支を維持するために無理をして会社を休まずにいたのであり本人の努力で会社勤務の減収を回避したことがかえって主婦休業損害の認定に不利に作用することがあってはならないという趣旨の主張を過去の裁判例も踏まえて、主張しました。
ご依頼者の症状、治療期間及び治療日数、治療内容、現実の日常生活状況の具体的内容からすると、主婦としての休業損害は裁判に移行した場合であっても、十分説得的に主張立証できると考えられるものでした。弁護士からの詳細かつ具体的な主張を踏まえた交渉の結果、保険会社も会社の収入減がないことに固執することはなくなり、主婦としての休業損害を認めることで態度を軟化させてきました。
結局、賃金センサス女子平均で算出した休業日額×実通院日数分相当の休業損害を支払うことで合意できました。
(通院慰謝料)
慰謝料についても保険会社は、自賠責基準である1日4200×2で計算してきていましたが、ご依頼者に主婦としての休業損害を認められる程度の主張ができたことに伴い、より金額の高い、赤い本基準で全通院期間を計算することで合意出来ました。
- 総括・コメント
-
兼業主婦の場合、交通事故に基づく症状により、仕事の減収の他に、家事労働へ影響することがあります。そのような場合、一般的に、仕事の減収か、女性の賃金センサス(行政機関が公表する労働者の平均的な収入)に基づく収入のどちらか高い方を基準とし判断されます。
しかし、正社員フルタイムの方が同時に主婦業もされている場合の休業損害の算定は、理論的にも実際の交渉現場でもそう簡単なものではありません。本件は、正社員フルタイムをされていてその収入に減少がない場合、主婦としての休業損害はいかなる範囲、金額で認められるかが最大の争点でした。
弁護士としては、最大限依頼者に有利な考え方で理論構成しつつ、訴訟になった場合に自身のよって立つ見解が裁判所にいれられないことをも想定して示談交渉にあたる必要があります。
今回は、ご依頼者の治療状況、生活状況の詳細を交渉相手の保険会社にしっかりと伝え、当方の主張内容を保険会社に十分にご理解いただけたと思われ、早期示談となりました。
また、本件は訴訟になった場合、当方の主張する金額が認められないリスクもないとはいえないケースでしたので、スムーズに示談することは,ご依頼者の賠償額を最適化するためのベストな方法であったと自負しています。