等級認定までの流れ
交通事故によって後遺障害が残った場合、その後の生活に支障をきたすことになります。
このため、後遺障害についての慰謝料と労働能力を喪失した分に相当する逸失利益などが損害賠償額に加算されます。
これらの損害賠償を受け取るためには、まず後遺障害等級認定の手続を行う必要があります。
そこで、後遺障害の等級認定までの流れについて解説します。
Contents
後遺障害等級認定を受けるための方法
後遺障害等級認定を受けるための方法としては、被害者本人が等級認定の申請を行う「被害者請求」と、加害者側の保険会社に等級認定の申請手続を依頼する「事前認定」の2つがあります。
被害者はいずれの方法を選択することもできます。
事前認定とは
事前認定を選択した場合、交通事故の被害者は、医師から後遺障害診断書を受け取り、これを加害者が加入している任意保険会社に提出するだけで足ります。
被害者請求とは
被害者請求の場合には、被害者が、後遺障害診断書に加え、等級認定に必要となるレントゲン画像やその他の検査結果に関する書類をすべて用意した上で、自賠責保険会社を通じて等級認定の審査を行う損害保険料率算出機構に書類を提出する必要があります。
被害者請求により後遺障害等級認定を受けるべき理由
一見すると、事前認定の方が交通事故の被害者の負担が軽いため良いように思われます。
しかし、後遺障害等級認定を受ける場合には、被害者請求を行うことがおすすめです。
なぜなら、事前認定の場合はいわば利害の対立する加害者の保険会社に委ねることから、被害者自身の納得いく請求が行われる保証がありませんが、被害者請求の場合は被害者が自ら、自身にとって適切と思われる書類を揃えて提出できるためです。
また、事前認定の場合には、自賠責機構から支払われる保険金が一旦加害者側の保険会社に支払われることになります。
したがって、被害者は保険会社との示談交渉が完了するまで保険金を受け取ることができません。
これに対し、被害者請求の場合には、後遺障害等級認定が確定するとすぐに自賠責機構から自賠責の保険金が被害者に支払われます。
交通事故によって後遺障害が残る場合、仕事ができず収入が大幅に減少していることもよくあります。
このため、できるだけ早いタイミングで被害者が保険金を受け取れる事前認定の方が被害者にとってメリットが大きいといえます。
後遺障害の等級認定までの流れ
被害者請求による後遺障害等級認定は、次の手順で進められます。
被害者が書類を用意
医師から、これ以上治療をしても改善の見込みがないという「症状固定」の診断を受けたらすぐに、被害者は後遺障害等級認定の審査に必要となる後遺障害診断書や、後遺障害の状況を示すレントゲン画像などの資料を用意します。
損害保険料率算出機構に書類を提出
被害者は後遺障害等級認定に必要となる書類が揃ったら、これを自賠責保険会社に提出します。
その後、自賠責保険会社から後遺障害等級認定の審査を行う損害保険料率算出機構に、書類が提出されます。
後遺障害等級の決定
損害保険料率算出機構は、提出された書類に基づき等級認定を行い、結果を被害者に通知します。
等級認定の審査は提出された書類をもとに行われますので、後遺障害等級認定を受けるためには必要十分な書類を用意することが重要です。
後遺障害等級認定の結果が通知されるまでの期間は、申請日から1ヶ月から2ヶ月程度です。
審査結果がわかるまでにさらに時間を要する場合があります。
後遺障害等級認定のポイント
後遺障害等級認定に基づき、後遺障害の慰謝料や逸失利益などの損害賠償額が算定されます。
したがって、交通事故の被害者にとって、どの等級に認定されるかは非常に重要です。
例えば、むち打ち症の場合に認められる後遺障害等級は12級13号か14級9号がほとんどです。
このうち、より症状が重い12級13号だと後遺障害についての慰謝料相場(弁護士会基準)は290万円ですが、14級9号と認定されれば慰謝料相場(弁護士会基準)は110万円となります。
このように、似たような症状であっても等級認定が少し異なるだけで損害賠償額が2倍以上異なることがあるのです。
適切な後遺障害等級認定を獲得するためには、後遺障害診断書の内容がポイントとなります。
後遺障害診断書の書き方次第で、本来受けられるはずの後遺障害等級認定が受けられないこともあります。
したがって、医師から症状固定の診断を受けたらすぐに弁護士に相談し、後遺障害診断書をどのように書いてもらえばよいかを相談することが大切です。
障害等級認定の審査基準と審査方法
後遺障害等級認定の審査基準は、被害者の機能障害の程度や持続性を評価し、それに応じて等級が決定されます。
審査方法は、主に医師が行う検査や診断に基づいて、適切な後遺障害等級が決定されます。
審査には、書類審査や実際の診察、リハビリテーションの経過などが含まれます。
医師は、患者の状態を詳細に把握し、後遺障害等級認定の基準に従って評価を行います。
医師の意見書と医療機関選びの重要性
後遺障害等級認定において、医師の意見書は非常に重要な役割を果たします。
医師の意見書は、患者の障害状況や治療経過を具体的に示し、後遺障害等級認定の根拠となるため、適切な医療機関と医師を選ぶことが重要です。
専門的な知識と経験を持つ医師が意見書を作成することで、適切な後遺障害等級認定が期待できます。
等級認定手続き中の注意点と対策
等級認定手続き中は、以下の注意点と対策があります。
- (1) 医療機関との連携を密に保つことで、状況変化に対応できます。
- (2) 診断や治療経過を詳細に記録し、医師の意見書の作成をサポートします。
- (3) 書類の提出期限や手続き方法を確認し、遅れやミスがないように注意します。
セカンドオピニオンの活用と後遺障害等級認定
後遺障害等級認定において、セカンドオピニオンは有益な選択肢です。
セカンドオピニオンとは別の医師や医療機関から意見や診断を受けることで、より適切な治療や後遺障害等級認定が得られる可能性があります。
特に、後遺障害等級認定に不安がある場合や、最初の医師の意見に納得できない場合には、セカンドオピニオンを検討してみることが有益です。
セカンドオピニオンを受ける際は、専門性や経験豊富な医師を選ぶことが重要です。
また、異なる医療機関でセカンドオピニオンを受けることにより、より客観的な評価が得られることが期待できます。